11月15日の勉強会の続きです。
2.の「おたふくかぜワクチンをめぐる最近の動向~ムンプス難聴の疾病負担をふまえて~」では、
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)を起こすムンプスウイルスについて、おたふくかぜの合併症、予防接種の重要性についてレクチャーを受けました。
おたふくかぜは2~3週間の潜伏期間を経て、左右の耳下腺、顎下腺(唾液を作る場所)のはれと痛みを伴う出席停止になる病気で、特効薬がなく、多くの患者さんが悪くならずに治る一方、一生の問題となる後遺症を残す可能性のある病気です。唯一の予防方法は予防接種しかありません。
おたふくかぜは接触・飛沫感染で、年間40万~140万人がかかっていると言われています。
9割が9歳未満ですが、近年10歳以上の患者さんの数が増えている傾向にあります。
不顕性感染と言って、症状が出ないけれども、感染が成立している方もいます。
おたふくかぜの合併症は髄膜炎、精巣炎、卵巣炎、膵炎、難聴と多彩です。合併症は不顕性感染でも発症します。前回のNHK朝の連続テレビ小説、「半分、青い。」のヒロインがおたふくかぜの不顕性感染による片側性感音性難聴という設定でした。
今回のレクチャーでクローズアップされたのは、感音性難聴(耳の聞こえが悪くなる、あるいは聞こえなくなる)についてでした。頻度はおたふくかぜ患者さんの約1000人に1人です。つまり、年間400~1400人の方が難聴になっていることになります。しかも具合の悪いことに、この難聴は治療による改善が期待できません。片耳が聞こえなくなるだけでも日常生活に支障が出てきますが、両耳の難聴は大きく支障をきたします。
おたふくかぜワクチンは以前、ワクチン接種後、無菌性髄膜炎の患者さんが増えたため、定期接種からはずれました。そのため、日本が世界の先進国で唯一定期接種化されていない国となり、接種率が30~40%と低い水準です。しかし、現時点では自費のワクチンではありますが、高度難聴を予防する唯一の手段です。接種年齢の制限はありません。今からでも遅くないので接種していない方はおたふくかぜワクチンの接種をお勧めいたします。
(より詳しいことをお知りになりたい方は「2015~2016年にかけて発症したムンプス難聴の大規模全国調査」をご覧ください。)